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シングルマザーイメージ

離婚をした場合に出てくる問題の一つが、子供の養育費です。

日本では母親が子供を引き取ることが多いですが、女性はまだまだ男性より平均収入が低いので、母子家庭は経済的に厳しくなりやすいです。

よって、父親からの養育費があると大きなサポートになります。

しかし、厚生労働省の調査によると、母子家庭のうち養育費を受け取っているのは3割に満たないのが現状です。

もう一切相手と関わりたくない、相手に経済力がない場合などは別ですが、ただ「仕組みを知らなかった」「よくわからない」という理由で養育費をもらわないのは損です。

離婚しても、離婚相手が自分たちの子供の「親」である事実は変わらないので、養育をする義務があるからです。

今回は、子どもの養育費の相場や何歳までもらえるかといった基本知識から、再婚したらどうなるか、元夫が養育費を払わない場合はどうすれば良いかを解説します。

養育費の基本

まずは、養育費についての基本情報である、金額の決め方と相場、何歳までもらえるかを見ていきます。

養育費の決め方

話し合う夫婦

厚生労働省によると、離婚した夫婦の約5割は、養育費の取り決めをせずに離婚をしています。

離婚してから養育費を請求すること自体はできますが、なるべく早めに相談しておくことをおすすめします。

具体的な養育費の内容は離婚するときに夫婦が話し合いで決めることが多いです。

金額や何歳まで支払うかなどの相場、相手の収入や経済状況をふまえて、お互いが合意できる金額で決めます。

その際は、最低限これだけの内容は取り決めておき、書面を取り交わすと安心です。

口約束ではなく、書面で残すことが大切です。

■離婚時に最低限決めておきたい養育費の内容

  • 金額
  • 何歳まで支払うか
  • 支払い日(毎月◯日など)
  • 支払い方法(毎月、銀行振込みなど)

もし、夫婦間で離婚について話し合いができない場合は、離婚調停を進めることになります。

離婚調停とは、家庭裁判所を通して離婚の取り決めをすることで、中立な立場の調停人が立ち会ってくれます。

それでもまとまらなければ、審判、裁判…と進んでいきますが、なるべく離婚調停くらいまでで決められるのが理想です。

また、家庭裁判所を通して行う離婚調停・審判・裁判で決まった養育費は、元夫が支払わなかった場合に差し押さえができる強制力があります(くわしくは後述)。

養育費の月平均

離婚相手からもらえる養育費の月平均は、平均的な収入ならば2~6万円くらいが相場です。

毎日の子供の食費が1,000円としたら、養育費で子供の1ヶ月分の食費がカバーできるくらいの金額です。

もしくは、2~6万円を1年間貯めておけば、公立の幼稚園や小学校・中学校・高校の1年間の学費くらいになります。

普段は養育費の振込口座に手を付けないでおいて、学費の支払い時期に使うという方法も良いかもしれません。

また、養育費の相場金額をあまりに超える金額を求めると、相手も支払いを渋るようになりやすいので注意が必要です。

■もっとくわしい養育費の相場

離婚調停などで養育費を決める場合は、研究に基づいた「養育費算定表」を参考にするのが一般的です。

判断材料となるのは、収入(養育費を払う側・受け取る側の両方)、自営業か会社員かどうか子供の年齢や人数です。

参考:養育費算定表(裁判所公式サイト)

※養育費算定表は子供が公立校にずっと進学したことを前提にしているので、私学に進学する場合は考慮する必要があります。

あくまで指標として考えておき、それぞれの家庭事情に合わせて検討することをおすすめします。

20歳まで支払うのが基本

成人式イメージ

養育費を支払うのは、基本的には子どもが20歳になる月までです。

しかし、この支払期間はそこまで厳密ではなく、夫婦が合意すれば前倒しや後ろ倒しをすることもできます。

たとえば子供が高卒で働く場合は、支払期間が高校卒業の18歳までになることもあります。

逆に、子供が大学に進学予定なら、大学卒業まで養育費を受け取るケースが多いです。

養育費の支払期間が短くなる例
子どもが高卒で働く場合
子どもが高卒で働く場合は、就職後は経済力に自立するとして「高校卒業まで」になることもあります。
養育費の支払期間が長くなる例
大学に進学する場合
大学在学中は子どもが十分な収入を得るのが難しいため、「大学卒業まで」に後ろ倒しする事例は多いです。
子どもに障害や病気がある場合
子どもが成人していても、障害や病気のため経済的な自立が難しければ、養育費の支払いを延長することがあります。

上記のような事情がある場合は、元配偶者と十分相談して養育費の支払期間を取り決めることをおすすめします。

特に大学進学予定の場合は、学費もかかり経済的な負担が増えるので、卒業まで養育費をもらえるに越したことはないと思います。

民法改正により2022年4月1日から成人年齢の引き下げが施行され、成人年齢が20歳から18歳に変わりましたが、養育費の取り決めがされた時点で成年年齢が20歳であれば従前どおり20歳まで養育費の支払義務があると考えられます。

ただし、今後は「〇〇歳に達したあとの3月まで」のように明確に支払期間の終期を定めることが望ましいとされています。

支払期間中に金額変更もできる

養育費を支払っている間なら、支払い金額の変更は何度でもできます。

たとえば、学費がかさんでしまって家計が厳しくなったことを理由に、養育費の増額を求めることも可能です。

逆に、養育費を支払う側が「失業したから養育費を減額したい」と相談することもできるので、その都度話し合いをしていくことになります。

話し合いがまとまらなければ、養育費を最初に取り決めたときと同じように、調停や審判、裁判などの段階を踏んでいきます。

子供が成人するまでに必要なお金

通帳と電卓

ちなみに、AIU保険の調査によると、子供が生まれてから大学卒業まで(22歳と想定)にかかる養育費は、約1,640万円です。

この金額を1ヶ月あたりで割ると、毎月6万円以上は養育費がかかる計算になります。

さらに、ここに学費などの教育費がかかると、幼稚園から大学までずっと公立の学校に通ったとしても1,000万円以上はかかります。

よって、子供を育てて教育するには、養育費と教育費をあわせて1ヶ月あたり10万円ほど必要になります。

しかし厳密には、子供の年齢によって必要な子育てのお金は違います。

年齢別での養育費・教育費の総額を見ると、特に養育費が特に多くなるのは中学生の間です。

■年齢別 一人あたりの年間子育て費用の総額

年代 年間子育て費用(養育費+教育費)
未就学児 1,043,535円
小学生 1,153,541円
中学生 1,555,567円

内閣府「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」より抜粋

小学生に上がる頃から子供の食費の出費が増えていき、中学生になると教育費がさらに増えることで、子育てにかかる金銭的負担が大きくなる傾向にあります。

しかし、この記事の冒頭で見た通り、離婚相手から受け取る養育費の相場は2~6万円ほどです。

子供が中学生に上がるタイミングで離婚をすると、子育てのために1ヶ月13万円が必要になるので、元配偶者から受け取る養育費だけではまずまかなえません。

よって、自分の収入にくわえて、子育て支援制度も活用していくことになります。

国の補助金では、児童手当児童扶養手当が代表的です。

児童手当は0~15歳の子供がいれば誰でも支給してもらえる一方、児童扶養手当は母子・父子家庭の子供のみが対象の制度です。

子育て系の補助金には収入制限があるものが多いですが、シングルマザーやシングルファーザーは知っておくと大きな助けになります。

地方自治体によっては、母子家庭向けの住宅手当や医療費助成制度を用意していることも多いので、住んでいる市区町村の公式サイトで調べてみることをおすすめします。

あえて養育費を受け取らない人もいる

母子

このように、母子家庭や父子家庭では経済的なハンデがつきものなので、養育費はもらえるに越したことはありません。

しかし、あえて養育費をもらわないことを選ぶ人もいます。

■養育費を受け取らないことで合意するケース

  • もう相手と関わりたくない
  • 養育費を受け取らない代わりに子供と会わせないようにしたい

「養育費はいらないから子供と会わないで」という交換条件は、よくあります。

しかし注意が必要なのは、本来は養育費と子供の面会については別問題ということです。

なので、こちらが養育費を受け取らないことで子供との面会を拒否することもできますが、相手が「子供と会わせろ」と主張することもできます。

このようなすれ違いから、話し合いによる協議離婚ではなく、離婚調停に発展する夫婦もいます。

ただし、離婚理由が虐待などネガティブなものだった場合は、裁判所から面会交流を禁止することもあります。

家庭裁判所を通して離婚した場合は、この取り決めに従うことになるので、「養育費を受け取らない代わりに子供との面会交流はしない」と決まるかもしれません。

再婚しても養育費は原則もらえる

4人家族

離婚後に良い縁に恵まれても、再婚すると養育費がもらえなくなるのではないかと不安に感じる人も多いです。

しかし、もし再婚しても、養育費の支払い義務がなくなることはありません。

再婚しただけでは親子関係は切れないので、子供が経済的に自立するまでは養育の義務があります。

再婚をすると、再婚相手は「養親」という立場になり、自分・養親・実親(生みの親)の3人で子供を養育することになります。

ただし、再婚によって養育費が減額になる可能性はあります。

代表的な例は、再婚相手が高収入で経済力が上がった場合です。

最初に養育費を取り決めるときと同じく、話し合いで減額するかどうかが決まらなければ、調停や審判などで変更を検討することもできます。

「養子縁組」の注意点

再婚したあと、再婚相手と子供が法律上も親子関係になるためには、養子縁組(ようしえんぐみ)をする必要があります。

養子縁組をしないと、再婚相手の正式な子供とみなされず、遺産相続などをする権利を持つことができません。

養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。

再婚後も養育費をもらいたい場合は、もっとも一般的な「普通養子縁組」をおすすめします。

普通養子縁組なら、離婚した元夫との親子関係を切らずに、再婚相手と子供で親子関係を結べるので、養育費をもらう権利も続きます。

15歳未満の子供に対して行える「特別養子縁組」は、元夫との親子関係を終了するので、養育費をもらう権利も失ってしまいます。

養育費を払わないトラブルを防ぐ方法

手をクロスする男性

なかには、養育費についてしっかり約束をしたにもかかわらず、支払わなくなる人もいます。

そうならないために、養育費について決めるときは下記のような対策をおすすめします。

■養育費の未払いを防ぐ方法

  1. 養育費内容を公正証書で残す
  2. 話し合いが難しければ、なるべく離婚調停にする

養育費について取り決めたとしても、口約束や一筆書いただけでは法的な拘束力がありません。

しかし、公的な契約書である「公正証書」を提出するか、家庭裁判所で離婚の取り決めをすれば、その約束事は公的なものとみなされます。

よって相手が養育費を支払わない場合は、本来は訴訟して勝たないと実行できない強制執行も可能になり、給与や財産の差し押さえができます。

その強制力は強く、もし元配偶者が借金で自己破産をしても、養育費の支払い義務は残ります。

■公正証書とは

公正証書とは、法務大臣が任命した法律のプロ「公証人」が作成する、公的な契約書です。

離婚以外には借金をするときなど、個人同士で法律トラブルを起こしたくないケースに用います。

また、公正証書は公正役場に保管するので、改ざんされたり紛失したりするリスクもありません。

作成には5~8万円ほどかかるものの、訴訟費用と比べればずっと安いので、利用するメリットは大きいです。

ちなみに、夫婦が合意さえできれば、一括払いで請求することも可能ではあります。

毎月払ってくれる保証がなさそう、かつ相手に一括払いできる財力があれば、そのような交渉をしてもいいと思います。

ただし、養育費の基本は月払いです。

一括払いは相手の合意を得にくい上に、経済状況が変わった場合に養育費の増額要求が難しいので、例外的な方法と思っておいた方が良いです。

相手が養育費を払わない場合の対処法

困る女性

相手が養育費を支払わない場合、家庭裁判所の調停で離婚していたり、公正証書を提出していたりすれば、裁判所に動いてもらうことができます。

家庭裁判所にお世話になって離婚した場合は、履行勧告→履行命令→強制執行という段階を踏んで、養育費を請求することができます。

離婚はお互いの話し合いで行った「協議離婚」で、養育費などの取り決めだけ公正証書を提出した場合は、履行勧告・履行命令は行えず強制執行のみ行なえます。

履行勧告
家庭裁判所が養育費の支払状況などを調査し、相手に電話や手紙、訪問で勧告をします。履行勧告は無料で依頼可能です。
履行命令
履行勧告に応じない相手に対しては、支払期日つきで履行命令を下します。これにも従わないと10万円以下の罰金もつきます。
強制執行
相手の給与、銀行の預貯金、不動産などの財産を差し押さえて、強制的に養育費を支払わせます。

これらの請求は法律上の手続きとなるので、やや複雑です。

可能であれば弁護士に依頼するのが確実ですが、そうなると弁護士費用がかかってしまいます。

弁護士費用を支払うのが難しい場合は、公的な司法支援センター「法テラス」に相談するのもおすすめです。

無料での法律相談や、弁護士費用の立て替えをしてもらえることもあります。

→「法テラス」公式サイトはこちら

養育費の時効に注意

相手が養育費を支払わなくなったら、なるべく早く対処することをおすすめします。

なぜなら、養育費には時効があるからです。

家庭裁判所を通さない協議離婚、いわゆる話し合いによる離婚の場合は、養育費の請求から5年で時効となります。

離婚調停など、家庭裁判所のサポートを受けて離婚した場合の時効は、10年です。

時効を過ぎた場合も、訴訟を起こして裁判で勝てば請求できることもありますが、時間とお金がかかるので大変です。

時効期間内であれば、支払われていなかった養育費をさかのぼって請求できるので、履行勧告や強制執行を考えているなら早めの手続きが望ましいです。